第1章 恋に落ちる
「男が男に可愛いって何なのよ?」
男子校だからだろうか?
俺には全く理解できない。
「まぁ、確かにニノは可愛いけどね」
さっきまで困った顔してたくせに、智までそんなことを言い出す。
「なんだよ。可愛いのは智だろ」
思わず言い返すと、智はふくれた。
俺も真似してふくれてやる。
そのまま見つめ合ってたら、急に馬鹿馬鹿しくなって同時に吹き出した。
「いや、だから2人ともそういうのも可愛んだって!無自覚に可愛さ振り撒いてんの」
雅紀が真顔で続ける。
「ほとんどのやつはさ、小動物見て可愛いって思うみたいな?そんなノリだと思うんだけどさ···中には本気のやつもいるかもだから」
「本気ってホモってこと?」
「ホモじゃなくてゲイって言うらしいよ」
智が訂正する。
今はそんなのどっちでもいいよ!
「学校だしさすがにいきなり襲ってきたりはしないだろうけど。気を付けなよ」
智のツッコミは無視して、雅紀は真顔のままそう忠告してくれた。
気を付けろって言われてもさ。
何にどうやって気を付けるのよ?
「分からないけど···でも中にはそういうのがいるかもって分かってるだけでもきっと違うよ」
そんなものなの?
その時の俺には雅紀の言うことが全然ピンと来なくて。
まさか、その数日後に身をもって理解することになるなんて、想像もしてなかった。