第4章 日常
「人の名前出さないでほしいわ、ニノに恨まれる」
事実だけど、巻き込まないでほしい。
2人の邪魔なんてしたくないんだから。
「恨みはしないでしょ。でもニノは潤のこと羨ましいと思ってるみたい」
智が面白そうに教えてくれる。
「翔くんと並ぶと絵になるって、なんか拗ねてた」
「なんだそれ?」
ヤキモチ妬かれてんのか?
でも、翔も似たようなこと言ってたな。
「翔は智と雅紀が羨ましいって言ってたぞ」
「俺?」
「ニノとベタベタしてんじゃん」
「ああ、スキンシップは多いかもね。でも翔くんだってニノとイチャイチャしてるのにねぇ」
「翔はそうは思ってないらしい」
今のネクタイのやり取りだけでも十分すぎるほどイチャイチャベタベタしてると思うんだけどな。
「なんであれでお互い片想いだって思ってるんだろうな?」
「···やっぱりニノが翔くん好きだってバレてるよね?」
「あんなの毎日見てりゃね。逆に隠す気があるのか聞きたいよ」
あれで気付かないやついるの?
「智だって翔がニノをどう思ってるか分かるだろ」
「そりゃね」
思わず苦笑いしてしまう。
「気付いてないのは本人たちだけだって」
「あんなに分かりやすくラブラブなのにね」
智も苦笑いしてる。
「でも、いいんじゃない?2人とも幸せそうだから」
ニノを見る智の瞳は相変わらず穏やかで優しい。
「そのうち気付くよ」
たぶん俺たちの願いは同じ。
好きな人が笑顔でいてくれること。
まだ時々チクリとしたり少し切なくなったりはするけど、あまり痛まなくなった俺の胸。
入り込む隙間もないくらいラブラブだっていうのもあるけど。
智が言う通り、翔が本当に幸せそうに笑ってるからなんだろうな。