第4章 日常
ーMsideー
体育の後の、むさ苦しい教室。
でも翔とニノの周りだけ今日も空気が甘い。
慣れた手つきで嬉しそうに翔のネクタイを結ぶニノ。
新妻か!って突っ込みたくなるけど。
ま、でもほっぺたピンクにしちゃってさ、俺も可愛いと思うよ。
結んでもらってる翔はにやけすぎだけど。
ちょっと前まで翔のこんな顔想像したこともなかったのに、今ではすっかり見慣れたな。
中学時代の翔はいつだって完璧で、ふざけることはあったけど、こんなにデレる姿なんて想像もつかなかった。
ネクタイなんて以前は俺が直してやることだってあった。
でも俺にはそんな顔したことないよな、なんてちょっと思う。
こんな小さいことでも、翔が俺のこと何とも思ってなかったことが分かって少しだけ切なくなる。
俺が自分の気持ちを全力で隠してたからだし、翔にはバレてなかったってことだからいいんだけど。
隠してるつもりらしいが1ミリも隠せていない気持ちがダダ漏れの2人に、本気で隠す気ないだろって言ってやりたい。
本気で隠すって言うのは俺みたいのを言うんだぜ、なんてね。
新婚のようなやり取りに、最初は驚いてガン見していたクラスメイトも、もはや慣れたもんで誰も見向きもしない。
だからって、翔もニノも周りを気にしなさすぎだと思うけど。
今もネクタイを結びながら
「俺以外が翔ちゃんのネクタイ結ぶのやだな」
「もう誰にも触らせないよ。だから、これからもずっとカズが締めてくれる?」
なんて甘ーい会話をしてる。
「プロポーズか!」
思わず声に出してしまった。
2人を見てると突っ込みどころが多いんだよ。
「あはは」
近くにいた智に笑われた。
「ニノ新妻みたいだよね~」
智も同じこと思ってたようだ。