第4章 日常
ーNsideー
あまり好きじゃなかった体育の授業。
体を動かすのは嫌いじゃないけど、授業となるとめんどくさいし。
汗をかくのも好きじゃない。
でも翔ちゃんを好きになってからは体育の授業が待ち遠しくなった。
だって運動神経のいい翔ちゃんはどの競技をしてもカッコいい。
飛び散る汗までキラキラしてて爽やかで。
誰が言い出したのか知らないけど、本当に王子さまって翔ちゃんにぴったりだよな~なんて。
自分だって授業中なのも忘れて翔ちゃんに見惚れちゃったりする。
「ニノ目がハートになってるよ」
ってよく智にからかわれるけど、翔ちゃんがカッコよすぎるんだから仕方ないと開き直るしかない。
体育のあとは、急いで制服に着替える。
俺はそんなに汗かかない方だけどケアもしっかりして。
俺にはこの後やることがあるから汗くさかったら困るんだ。
もちろんカッコいい翔ちゃんを見るのも楽しみなんだけど、俺が体育の授業を待ち遠しく思うのは、授業後のこっちの方が理由として大きいかも。
さっさと体操着を片付けてたら
「カズー」
翔ちゃんに呼ばれた。
「はーい」
すぐに翔ちゃんのところに行くと、お願いしますってネクタイを渡される。
これが最近の俺の仕事。
体育の後に翔ちゃんのネクタイを結んであげるの。
結びながら時々チラッと目線を上げれば、すぐそこに翔ちゃんの顔。
その近さに毎回すごいドキドキする。
それにさ、ネクタイ結んであげるとか!
なんか新婚さんみたいじゃない!?
俺、奥さんみたいじゃない!?
···なんてね!なーんてね!!
心の中で1人盛大に照れながら、にやける口元と火照る頬がバレないように俯き気味にネクタイに集中してるフリをした。