第4章 日常
ーSsideー
智くんが登校してきたら、カズはすぐに智くんのところへ行ってしまった。
そのままキャッキャとじゃれ始める2人。
俺がカズと友だちになる前から何度も目にしてきた光景だ。
仲良くじゃれ合う姿は見ていて微笑ましいし、すごく可愛い。
でも2人だけの世界って感じがして、そこに入れない俺はちょっと寂しい。
この近寄りにくい2人の空気感みたいなのも、なかなかカズに声を掛けられなかった一因なんだよな。
本音を言えば智くんがかなり羨ましい。
俺だってカズと至近距離で触れたり触れられたりしたい!
あの真っ白でスベスベの頬にあんな気軽に触れるなんて、羨ましいに決まってる!
「またそんな顔してる」
潤がニヤニヤしながら近付いてくる。
俺をからかうつもりだろう。
「智くんが羨ましそうだって言いたいんだろ?悪いが自覚はある」
「お、素直」
先に自ら認めれば面白そうに目を丸くして見せる。
「だってカズがあんなことするの智くんだけだろ。あんな無邪気に甘えるなんて、俺には絶対しないじゃん」
「まぁ何でか知らないけど、ニノは智に対してスキンシップ多いよな。でも翔だってニノと手繋いでたじゃん」
つい愚痴をこぼしたら、ニヤリと笑われた。
そうだった、あの時潤に見られてるんだよな。
「繋いだは繋いだけど···あれはカズからしたら藁にもすがる思いというかさ、命綱みたいなものだったんだよ」
そうだよ···
何かにすがりつきたい時に俺が隣にいたから。
あれはそれだけのことだ。
「···翔が藁だなんて贅沢だな」
「何言ってんだか」
真顔で言う潤を笑い飛ばす。
「命綱ねぇ···俺にはそれだけには見えなかったけど」
なんて、ちょっと意味ありげに言われて一瞬嬉しくなったが。
あくまで潤がそう思ったってだけだし。
そもそも潤は俺がカズのこと好きなの知ってるから、そう見えたのかもしれない。
それか俺のこと励ましてくれてんのかな。