第4章 日常
ーOsideー
教室に着くと、ニノは翔くんやクラスメイト数人と楽しそうに談笑していた。
例の“呼び出し手繋ぎ”の噂が広まってから、ニノへのファンレターはパタリと届かなくなったらしい。
結局なんだったんだろって不思議そうにしてたけど、ずっと気持ち悪がってたから安心したと思う。
呼び出しとかもあれ以降ないみたいだし、本当に良かったよ。
ぼんやりとニノを見ていたつもりだったのに
「智、おはよ!またボーッとしてるよ?」
気付いたらそのニノは目の前にいた。
あれ?いつの間に?
ニノは面白そうに俺を見ながら、手にしたジュースのストローをチューっと吸ってる。
「朝からジュースなんて珍しいね」
「生田くんがくれた」
ニノったら人見知りなのにいつの間にか友だちが増えたよね。
ま、俺もなんだけど。
翔くんや潤と付き合うようになってから、なんとなく他のクラスメイトと接する機会が増えた。
でもニノが俺だけにべったりだった頃がちょっと懐かしいかも、なんて。
ちょっぴり寂しくもなったりして。
「智も飲む?」
ニノがジュースを差し出してくれたから、遠慮なく飲んだら飲みすぎって怒られた。
「なくなっちゃったじゃん!」
「一口しか飲んでないもん!」
ニノがほっぺを膨らますから、マネして俺も膨らませてみたら、ニノにむぎゅっと潰された。
「あはは!変な顔!」
「もうっ」
ケラケラ笑うニノ。
そのなんの憂いもない笑顔にホッとする。
ついでに変わらないスキンシップにも何だか嬉しくなった。
「おかえしっ!」
ニノのやわらかいほっぺを両手で挟んで潰してやる。
「ニノだって変な顔!」
「やめりょー」
「言えてないし」
仕返しだから俺だって笑ってやるもんね。
「お前ら何ジュースでケンカしてんだ。子どもか」
潤に呆れられても気にしない。
最近のニノは翔くんにべったりだから、たまには前みたいに俺が独り占めしてもいいでしょ。