第21章 調理実習
「キュウリを押さえる手はネコの手だよ!ぐーにして!にゃんにゃん!」
翔に説明しながらネコのポーズを取るニノ。
顔の横でグーにした手を動かしているが、翔は真っ赤な顔で鼻を押さえてる。
可愛すぎるからって鼻血出すなよ?
つか、周りのやつらもにやけて見惚れてるし。
みんな止まってねーで手動かせよ。
「翔ちゃん?聞いてる?」
「はいっ!聞いてます!」
「ふふっ、何で敬語なの?」
翔はニノに顔を覗き込まれて慌てて姿勢を正した。
「包丁は刃を下にしてね、押すんじゃなくて引くの。焦んなくていいからね、ゆっくりゆっくり!ほら、切れた!翔ちゃん上手~!」
ニノに言われるまま、ゆっくり包丁を引いてキュウリを切る翔。
ヘタが切れただけなのにニノが褒めちぎるから、翔はどや顔だ。
いやいや、このペースだと作り終わんないぞと思っていたら
「翔ちゃんとっても上手なんだけどね、俺もキュウリ切りたいな?代わってくれる?それで翔ちゃんにはレタス洗うのお願いしていい?」
「分かった」
ニノが上目遣いで可愛くお願いするフリしながら、うまいこと翔から包丁を取り上げる。
デレデレになった翔は言われた通り素直にレタスに向き合う。
その隣で、ニノがスピーディーにキュウリを切りながら
「1枚ずつ丁寧にはずして、優しく洗ってね」
「うん」
手は止めずに翔に指示を出していく。
「洗えたら水気をきって、一口サイズにちぎって」
「これくらい?」
「ちょうどいい大きさだよ~さすが翔ちゃん!」
褒めながら、翔でも出来る簡単なことをうまいことやらせてる。
「ニノ、翔のあしらい上手いな」
「ふふ、うまいこと手のひらで転がしてるね」
思わず呟いたら、智が面白そうに笑った。
「包丁使いもうまいし、ニノはいい嫁になりそうだな」
「翔くん限定でしか嫁にはならないだろうけど。でもニノの花嫁姿とか可愛いだろうね」
そんなことを話ながら、俺も智も手を動かし続けた。