第20章 想い届く
「そんなこと言わないで。カズの手作りチョコ、本当に美味かったし、すごく嬉しかったから…お礼がしたいんだ」
これは本当。
何も嘘はない。
でも、理由はこれだけじゃなくて。
バレンタインに俺が口にした“好きな人がいる”って発言。
あれがそもそもの元凶だったと知った俺は、あの日の自分をぶん殴りたくなった。
女の子のチョコを断るために口に出したんだけど、心のどこかでカズが自分のことだって気付いてくれないかな…なんて。
そんなズルい考えもあったんだ。
自分は何も言わないくせに、カズには気付いてほしいなんて、自分勝手にも程がある。
結局、それでカズに誤解させることになって。
俺はこの世の終わりのような絶望感を味わった。
でも自分が撒いた種だったんだよ。
あんな遠回しなこと言わずに、まっすぐカズに告白すればいいだけの話だったんだから。
振り返ってみれば、告白するチャンスなんていくらでもあった…ような気がする。
まぁ、それはカズの気持ちを知った今だからそう思えるのかもしれないけど。
だから、俺が苦しかったのは自分のせいだから仕方ない。
でもカズのことまで苦しめてしまった。
この短期間でひと回り痩せてしまうほど追い詰めてしまった。