第20章 想い届く
-Sside-
「翔ちゃん帰ろ♡」
にっこり笑うカズの首元には俺とお揃いのマフラーが巻かれてる。
また使ってくれていることに心から安心して。
心から嬉しく思って。
また泣きそうになった。
「翔ちゃん?」
すぐに返事が出来なかった俺にカズが心配そうな顔をするから、慌てて笑顔を作る。
いきなり泣かれたらカズだって意味が分からないだろう。
それも、こんな何でもないタイミングで…
でも、どうも涙腺がぶっ壊れてしまってるようで…本当に困るんだけど、自分でもどうにも出来ないでいる。
カズに名前を呼ばれる度…
カズの笑顔を見る度…
いや、カズが俺の隣にいてくれるだけで…
幸せで…幸せすぎて…
それだけで泣きそうになるんだ。
「ごめんごめん!帰ろうか!」
「うん♡」
ほら、また…
可愛い笑顔に胸がいっぱいになる。
「カズ、今ほしいものってある?」
「ほしいもの?」
涙が出る前にと急いで口を開いた。
突然すぎる質問かもだけど、これは今俺が一番知りたいこと。
カズはキョトンと首を傾げていて…ああ、可愛い。
「もうすぐホワイトデーだからさ、お返し何がいい?」
どうせならカズが喜ぶものをプレゼントしたい。
それなら、本人に直接聞くのが確実だろう。
本当はサプライズで用意して驚かせたりとかしたい気もするけど…そんな自己満足より、より喜んでもらえることの方が大切だ。
「そんな…お返しなんていいよ…」
カズはポッと頰をピンクに染めると、手をパタパタ振った。
その照れたような顔が、仕草がやっぱりとても可愛い。
この可愛い子が俺の恋人なんだ…
怖いくらい幸せでまた泣きそうだ。