第20章 想い届く
-Nside-
日常が幸せ増し増しで戻ってきた。
「翔ちゃん♡」
「なーに?カズ」
「ふふ♡呼んだだけ♡」
「えー?」
“翔ちゃん”って呼べることが嬉しくて。
意味もなく名前を呼んでしまう俺に、翔ちゃんはにこにこ付き合ってくれる。
名前を呼ぶのもずっと我慢してたから。
もう呼べないと思ってた俺だけの特別な呼び方を、また口に出来るだけで泣きそうなくらい幸せだ。
翔ちゃんの笑顔を見つめながら、しみじみと幸せを噛み締めていたら
「いやー…甘さが増したな…」
ちょっとうんざりしたように潤くんが呟いたけど。
それはこっちのセリフだよって思う。
「幸せそうでいいじゃん」
「まぁ、そうだけど…」
にこにこと微笑む智に、潤くんの目尻は下がりまくりで。
その顔には、智のことが愛しくて堪らないって書いてある。
2人を包む空気は十分すぎるくらい甘い。
ほら、自分たちだってラブラブなくせに…
でも両想いになってからの智はますます可愛いからね、潤くんがデレちゃう気持ちは分かる。
それに智がすごく幸せそうで、俺も嬉しいから。
口には出さないであげるけど。
ああ、平和だな…
バラバラになってしまった時間があったから、こんな何でもない時間まで楽しくて愛しい。
あの苦しかった時間は、俺の勘違いと思い込みが発端だって教えてもらったから、それは今でも猛反省してるけど。
みんなのおかげで元に戻れた。
…ううん、元以上の関係になれた。
智、雅紀、潤くん…中丸くんまで…
俺と翔ちゃんのために動いてくれたって知って。
言葉に出来ないくらい感謝してる。