第20章 想い届く
中丸の言う通り、目の前のニノは確かに柔らかく微笑んでいた。
でも、それよりも驚いたことがあって。
翔が、泣いてる…
その涙をニノが優しく拭ってて。
いつもと逆だな、なんて思うけど。
正直、翔がここまで泣いているのを見たのは初めてで、けっこう衝撃を受けている。
それだけ今回の件が翔には堪えたってことか…
でもまぁ、幸せや安堵の涙でもあるんだろうから、好きなだけ泣けばいい。
どれだけ泣いてもニノは受け止めるだろうから。
更に視線を移すと、翔たちの向こうで雅紀が翔以上に大号泣していて。
智と風間があれこれ声を掛けながら背中を擦ってやってた。
あーあ、鼻水まで出ちゃってるじゃん…
クスッと小さな笑いが漏れる。
でも雅紀は誰よりもニノとの付き合いが長くて。
兄弟同然の幼なじみで。
自分だってニノのこと好きなのに、自分よりニノの幸せを願っていて。
最近は自分のせいで2人がすれ違ってしまったって責任を感じてずっと落ち込んでいた。
だから、やっとニノと翔が結ばれて。
嬉しくて、安心して。
でもきっと完全に失恋したことへの悲しさや切なさみたいなものもあるはずで。
そりゃ涙も出るか。
なら泣いて泣いて。
出来るならニノヘの恋心も涙と一緒に流しちゃってさ。
すっきりしたら。
また明日からみんなで笑って過ごそう。
当たり前だった時間を取り戻そうぜ。
みんなを見ていたら何だかすごく幸せな気持ちになって。
完全に見せ物になってしまっていることを、どのタイミングで翔たちに教えようか悩んで。
知った時の2人の反応を想像して、また笑った。