第20章 想い届く
「悪かったな、こんなこと頼んで…」
中丸に頭を下げる。
中丸に頼んだのは、ニノを誘って2人で帰ってもらうこと。
その前に俺が翔の不安を煽っておいて、あとは翔次第だった。
もし翔が動かなければ、そのまま普通にニノと下校してもらう予定だったけど。
翔は動いた。
やっと…動いてくれた。
ただ俺たちが望んだ通りの結果になってくれたとは言え、やっぱり中丸に対して申し訳ない気持ちは残る。
「あいつらがうまくいったのは中丸のおかげだよ。本当にありがとう」
「そんなことしないでよ!顔上げて!俺は全然…大したことしてないからさ…」
心からの謝意と感謝を込めて深く頭を下げていたら、慌てた中丸に強引に体を起こされた。
大袈裟でもなんでもなく、本当に中丸のおかげなんだけどな。
謙虚というか…いいやつ過ぎるぜ…
「ここまでしてくれる友だちがいて、二宮くんも櫻井くんも幸せだね」
「いや…」
しみじみと言われるとちょっと照れてしまう。
「俺も2人がうまくいって本当に良かったと思ってる。俺が役に立てたなら嬉しいよ」
中丸はまだ抱き合ってる翔とニノに視線を向けると、いつもの優しい笑みを浮かべた。
「特等席で二宮くんのあんな幸せそうな笑顔を見れたしね」
中丸につられて俺も視線を動かすと、確かにこの位置からは2人の表情がよく見えた。
もしかしたら中丸には2人のやり取りも聞こえていたかもしれないな…なんて、ふと思う。
聞こえていたとしても、中丸はそれを言いふらすようなことはしないだろうから、わざわざ確認はしないけど。