第20章 想い届く
声を詰まらせた俺を不思議そうにカズが見上げて、驚いたように息を呑んだ。
その顔が悲しそうに歪んでいく。
「翔ちゃん…ごめん…ごめんね…」
俺の頰に手を伸ばして。
何度も謝りながら涙を拭ってくれる。
カズが謝ることなんて何もないのに。
口を開けば嗚咽が漏れそうで、首を横に振ることしか出来ない。
「翔ちゃん…」
こんなに情けない姿を見せてしまって幻滅されるんじゃないかと不安になる。
それでも、カズが俺の腕の中にいるという幸せな現実と、こみ上げてくる様々な感情とがぶつかり合って。
涙は止まってくれない。
「もう離れないから…絶対離れないから…泣かないで…」
泣かないでと言うカズの目にも涙が溜まっている。
カズのせいじゃないと伝えたいのに、何も言えないまま。
カズの言葉がまた俺を幸せにしてくれる。
「すきだよ…翔ちゃん、だいすき…」
俺の不安を全て吹き飛ばすように、カズはぎゅっとしがみついたまま、何度も好きだと伝えてくれる。
「俺も…好きだよ…もう離さない…」
嗚咽まじりに何とか言葉を絞り出すと、カズは潤んだ瞳でにっこり笑った。
俺の一目惚れした花のような笑顔…
その笑顔に、心の中にあったモヤモヤしたものが全部消えていくのを感じた。
真っ暗だった世界に光が射し込んで。
俺を覆っていたヴェールは剥がれ落ちていった。
色を取り戻した景色の中、カズがキラキラと輝いて見えた。