第20章 想い届く
-Sside-
カズも俺と同じ気持ちだったなんて…
すぐには信じられなかったけれど、腕の中のカズは何度も何度も“すき”と伝えてくれる。
シンプルな言葉が俺の心に降り積もって。
自然とカズの気持ちを受け入れていく。
「翔ちゃんがすき…だいすき…」
見上げてくるうるうるの茶色い瞳も。
赤く染まった頰も、震える細い肩も。
可愛くて、可愛くて。
「俺も大好き」
こみ上げてくる愛しさをどうしたらいいか分からなくて。
カズを力いっぱい抱き締めた。
こんなに力を込めたらカズが潰れてしまうんじゃないかって心配になるのに、どうしても腕の力を緩めることが出来ない。
静かに葛藤していたら、カズもそっと背中に腕をまわしてくれた。
小さい手がきゅっとブレザーを掴んだのが分かって、胸がいっぱいになる。
可愛くて。
愛しくて。
カズが同じ想いでいてくれたことが幸せで。
大切な存在を失わずに済んだことに心から安堵して。
でも…
抱き締めたカズはひと回り小さくなってしまっていて。
カズも俺と同じくらい…もしかしたら俺以上に、ずっと苦しんでいたのかな…
悲しくてさみしくて、1人で泣いたりしたのかな…
想像しただけで胸が締め付けられるように痛んだ。
ごめん、カズ…
俺がもっと早く自分の想いに向き合っていれば。
あの時、逃げずにカズに気持ちを伝えていれば。
カズをこんなに痩せてしまうほど苦しめることはなかったのに。
後悔と申し訳なさが押し寄せる。
それなのに、カズは本当に幸せそうに微笑んでくれて。
「夢みたい…しあわせ…」
その笑顔に胸が詰まる。
「俺、も…」
俺も幸せだって伝えたいのに、色んな感情が渦巻いてしまって。
出てきたのは言葉ではなく、涙だった…