第20章 想い届く
これが現実だって信じられなくて。
呆然と翔ちゃんを見つめ返すしか出来ない俺に
「カズが好きだよ」
翔ちゃんがくり返し伝えてくれる。
すき?
翔ちゃんが、俺を?
翔ちゃんの、好きな人が…
…俺なの?
ずっと探してて、見つけられなかった相手が…俺?
考えたこともなかったから、頭が追い付かない。
現実味がなくて、夢を見てるんじゃないかって…ほっぺたをつねりたくなる。
「うそ…」
口から勝手にこぼれた言葉は
「嘘じゃないよ」
すぐに翔ちゃんに否定された。
「…ほんとに?」
「うん」
「ほんとにほんと?」
「…俺ってそんなに信用ない?」
どうしても信じられなくて、何度も確認してしまう俺に、翔ちゃんは悲しい顔をした。
「それとも…信じたくない?」
その声はまた震えていて。
「カズは…俺に好きって言われて…嫌?迷惑だって思ってる?」
「いやじゃない!そんなわけない!」
叫ぶように否定したけど、翔ちゃんの瞳は不安そうに揺れていた。
揺れる瞳が、翔ちゃんの想いを伝えてくれる。
翔ちゃんは嘘なんかつかない。
俺の大好きな人はそんな人じゃない。
信じられないけど…
翔ちゃんは本当に俺のことが好きなんだ…
ああ、俺もちゃんと伝えなきゃ。