第20章 想い届く
ーNsideー
気付いたら突然現れた翔ちゃんの腕の中で。
え?なに?
なんか今翔ちゃんに好きって言われた気がしたんだけど…
え?幻聴?
翔ちゃんが好きすぎて、でもそばにいられなくて悲しくて。
俺の頭ついにおかしくなった?
え?てかなんで翔ちゃんに抱き締められてるの?
何がなんだか分からなくて、パニックになりかけた俺の耳に
「カズ…」
翔ちゃんの声が届いた。
優しい、俺の大好きな声。
翔ちゃんの言葉はいつだって俺を落ち着かせてくれた。
それはこんな状況でも有効みたいで。
翔ちゃんの声を聞いただけで頭がスッと落ち着いた。
なんでこんなことになってるのか分からないけど、翔ちゃんの腕の中は俺が世界で一番落ち着ける場所で。
もう二度と抱き締めてもらえることなんてないと思ってたから…
ダメだって分かってても嬉しくて。
腕を振り払って逃げることが出来なくて。
ただ息を潜めてじっと縮こまっていたら
「好きなんだ……俺の隣にはカズに居てほしいし、カズの隣には俺が居たい」
あがった息を整えていた翔ちゃんが震える声を絞り出した。
………え?
幻聴じゃ、なかったの…?
腕の中から見上げてみたら、すごく真剣な顔をした翔ちゃんと目が合った。
「カズが好きだ」
まっすぐに見つめられたまま、信じられない告白を聞く。
「好きだから…カズに隣に居てほしいんだ…」