第20章 想い届く
-Mside-
ニノは休み時間のたびに姿を消すようになった。
翔と智は沈み込んでしまっているし、雅紀も自分の教室から動かない。
あんなに5人でいることが当たり前だったのに、今はバラバラだ。
意味もなく騒いで笑って、ただ楽しかった。
ほんの数日前まで当たり前だった時間が、今じゃ遠い昔のことのように思える。
寂しいな…
もうあの時間は戻らないのかな…
きっと誰1人としてこんな状況を望んでなんていないのに。
やるせない思いを抱きながら、俺もどうすることも出来ずにいた。
そんなもどかしい日々の中、最初に動いたのは智だった。
「ねぇ、潤。昼休み付き合ってくれない?」
「いいけど…どこに?」
「ニノを捕まえて、ちゃんと話をしたいんだ」
きっぱり言い切った智は、何か決心した目をしていて。
「潤にも聞いてほしい」
ああ、きっと告白の返事をされるんだなって思った。
どんな答えが返ってくるのかは分からないけれど、智の出した答えなら何だっていい。
「分かった」
にっこり笑ったら、智も安心したように少し笑った。
智の笑顔を見たのが久しぶりな気がして、すごく嬉しくなる。
やっぱり智には笑っててほしい。
ニノとの話し合いがうまくいって、また智に笑顔が戻りますように…
自分のことなんてどうでもよくて。
ただそれだけを願った。