第20章 想い届く
昼休みになると同時に教室を抜け出したニノの後ろを、智が気配を消してついていく。
本物の忍者のような動きについ感心していたら、振り向いた智に小さく手招きされた。
その顔が早く来いって言ってて。
はいはい、分かってますよ。
小さく苦笑して、俺も足音を立てないよう気をつけながら智を追い掛けた。
ニノに気づかれないように階段を登りながら内心首を傾げる。
この先には屋上しかない。
あそこは立ち入り禁止で鍵が掛かってるはずだけど…
俺の疑問を知る由もないニノは、何の躊躇いもなく扉に手を掛け、あっさり開けると屋上へ消えて行った。
鍵掛かってないのかよ!
危ねぇな!
「潤!行くよ!」
ニノの姿が見えなくなって隠れるのをやめた智が、勢いよく階段を駆け上がって行く。
「ニノ!」
智がその勢いのまま屋上に飛び出すと
「……智?!なんで…?」
ニノがギョッとした顔で振り向いた。
咄嗟に後ずさって逃げようとしてるが、屋上だから逃げようがない。
唯一の出入口の前には俺が立ってるし。
それでもジリジリと後ろに下がって行くニノに、智が一気に距離を詰めるとその腕を掴んだ。
「ニノ、逃げないで…話を聞いて?」
智が悲しそうな声で訴えると、ニノは動くのをやめて、おずおずと智に視線を向ける。
「ニノ…ごめんね。傷付けてごめん」
智がニノをまっすぐ見つめて謝ると、ニノの瞳がゆらゆらと揺れた。