第20章 想い届く
「俺もここにいていいの?」
「もちろん!俺、あっちで本読んでるけど気にしないで」
「分かった、置物だと思っとく…ふふっ」
また笑っちゃったら、中丸くんも笑って。
スタスタと俺から距離を取ると、地面に座って本を読み始めた。
適度な距離にホッとする。
1人だけど完全に1人ではなくて。
きっと話し掛ければ答えてくれるだろうし、だからってズカズカ踏み込んできたりはしないんじゃないかなって。
たった今知り合って、ほんのちょっとしか喋ってない人だけど。
なんだかそんな風に感じて。
俺もその場に座って、ぼんやり休み時間を過ごした。
それから毎日昼休みは屋上に来てる。
中丸くんはいたりいなかったり。
いたらちょっとだけ喋ったり、全く喋らなかったり。
そんな関係が今の俺にはすごく楽だった。
「二宮くん!起きてる?」
「…起きてる」
今日は天気がいいから地面に寝っ転がって空を眺めてたんだけど。
結局ずっと目をつぶってたな…
だって眩しかったんだもん。
目が痛くて…泣いちゃいそうだったから。
「そろそろチャイム鳴るよ、戻ろ」
「…はーい」
もそもそ1人で起き上がる。
翔ちゃんなら、スッと手を差し伸べて起こしてくれるのにな…なんて。
翔ちゃんと中丸くんを比べてどうするんだか。
バカみたい。
別に中丸くんにそんなことしてほしいなんて思わないし。
それに翔ちゃんだって、もう俺にそんなことしてくれないよ。
また胸がぎゅっと痛む。
いくら心の中だけだって、もう翔ちゃんって呼ぶのもやめなきゃかな…
教室まで中丸くんと並んで歩いていても、頭の中は翔ちゃんのことでいっぱいだった。