第20章 想い届く
「今日は1人なの?櫻井くんや大野くんは一緒じゃないの?」
悪気なんて全くないであろう中丸くんの問いかけに、答えることは出来なかった。
口を開けば泣いちゃいそうで。
中丸くんも何かを察したのか、それ以上は聞いてこなかった。
…っていうか、初めましての人が不思議に思うくらい、俺って翔ちゃんや智と一緒にいるイメージなのか。
イメージっていうか、実際そうだったんだけど。
泣かないように唇をぎゅっと噛み締めていたら
「ここ立ち入り禁止なんだけど、鍵が壊れてるんだよね。知ってる人少ないみたいでさ、1人になりたい時とかいいよ」
中丸くんが話を変えてくれた。
笑ってオススメって言ってくれるけど。
「俺、中丸くんの1人の時間邪魔しちゃったんだね…ごめん」
「そんなの気にしないでよ、別に俺だけの場所ってわけじゃないし」
なんだか申し訳なくて謝ったら、ぶんぶんと手を振る。
「俺は時々いるけど。置物かなんかだと思って気にしないでくれればいいから」
「置物って…」
真顔で大真面目にいうからなんかおかしくて。
プッと小さく吹き出してしまった。
「可愛い…」
「え?なに?」
「いや、なんでもない!」
中丸くんが何か呟いたけど、よく聞き取れなくて。
聞き返したけど、教えてくれなかった。
きっと大したことじゃなかったんだろう。