第20章 想い届く
翔ちゃんに好きな人と幸せになってほしい。
でもまだ俺以外の人と一緒にいる翔ちゃんを見たくない。
だから教室にはいられなくて…
休み時間のたびに逃げ出した。
無駄に校内を徘徊してみたけど、10分休みはともかく昼休みは長い。
どこかいい隠れ場所ないかな…
中庭はダメだ。
うっかり翔ちゃんや智たちに会っちゃうかもしれない。
もっと、人が少なくて、誰も寄り付かなさそうなところ。
あちこち彷徨ってたどり着いたのは屋上だった。
生徒立ち入り禁止の貼り紙がしてある。
それでもダメ元で扉に手をかけてみたら。
なんとあっさり開いてしまった。
そっと外に出てみる。
誰もいない…
立ち入り禁止の場所だから当たり前か。
良い場所見つけたかも。
ちょっとだけ気持ちが上向いたその時
「え!?二宮くん!?」
「ひゃっ…」
突然名前を呼ばれて、飛び上がるほど驚いた。
だって誰もいないと思ってたから。
「あ、ごめん…驚かせて…」
声のした方を振り向けば、申し訳なさそうな顔をした男子生徒が1人。
学年章で同級生だとは分かったけど、知らない人。
「誰?なんで俺のこと知ってるの?」
「俺、1-3の中丸。二宮くん有名だからさ、そりゃ知ってるよ」
中丸くんとやらは困ったみたいに笑う。
俺が有名?なんで?
あ、そっか…
翔ちゃんや潤くんが有名人なんだもんね。
あんなにカッコよくて目立つ人たちと一緒にいたから俺まで覚えられちゃったのかも。