第20章 想い届く
智の涙はなかなか止まらなかったけど、それでも時間が経つにつれて腕の中から聞こえてくる泣き声は少しずつ小さくなってきて。
しゃくり上げる間隔も長くなって、やがて鼻を啜る音だけになった。
少し落ち着いたかな…
そっと体を離して、智の顔を覗き込む。
ひでぇ顔…
顔中、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだし、目も鼻も真っ赤でまぶたも腫れぼったい。
でもこんな顔だって俺には可愛く見えるんだから重症だ。
ポケットからハンカチを取り出して、ぐちゃぐちゃな顔を綺麗に拭いてやる。
泣きすぎたのか智はボーッとしていて、されるままだった。
本当ならこのまま家まで送って行って休ませてやりたいし、これ以上泣かせたくない。
でも、聞かずにはいられなかった。
智だけじゃなく、やっぱりニノのことも心配だから。
「智…ニノはどうした?何があったんだよ?」
ピクリと智の肩が揺れて、その目が再び潤んだ。
「潤、どうしよ…俺…ニノを傷つけちゃった…」
震える声で告げられたのは、耳を疑う言葉で。
「………は?」
智がニノを傷つける?
既にあれだけボロボロになってたニノを?智が?
……いや、ないだろ。
どう考えても絶対ない。
そう思うのに。
「ニノに友だちやめるって言われた…」
「はぁぁ?!」
智は目に涙を溜めて、悲しそうに呟く。
恋愛感情ではなくても、お互い大好きで。
完全に両想いじゃん。
その2人が、友だちをやめる?
どんなに考えても想像つかない。