第20章 想い届く
拭っても拭っても智の涙が止まる気配はなくて。
それならもう気が済むまで泣けばいいと、智をそっと胸に抱き込んだ。
嫌がられるかとも思ったけど、智は逆に俺にしがみついてきて。
しっかり抱き締めながら、俺を拒絶しないでくれて良かったと心から思った。
智がこんなに泣くなんて、ニノ絡みなのは確かだろうけど。
さっきの流れからどうしてこんな状況になったのか…どんなに考えてもさっぱり分からない。
早く智を泣き止ませてやりたい。
智が落ち着かないことには話が聞けないってのもあるけど。
単純に智が泣いてるのを見るのは辛い。
最初から一緒にニノを追い掛けていれば…と、後悔する。
それでも智を1人で泣かせないで済んで本当に良かった。
俺に出来ることなんてあまりないかもしれない。
けど、智が泣き止むまで抱き締めていることは出来る。
泣き止んだら話を聞こう。
何かあったんだろうから、一緒に解決策を考えよう。
智を1人で泣かせたりしない。
1人で苦しませたりしない。
こんなに大切で愛おしい存在にそんなこと出来るわけがない。
智を抱き締める腕に力を込めながら、同じように泣いてるであろうニノを思って切なくなった。
同時に何もしなかった翔への怒りが湧いてくる。
なぁ、翔。
お前も同じはずだろ?
ニノのこと何よりも大切に想ってるんじゃないのかよ?
きっとニノは今も1人で泣いてる。
昨日みたいに…いや、きっと昨日以上に、だ。
お前はそれでいいのか?
誰よりも何よりも大切な人を1人で泣かせてなんとも思わないのかよ?