第20章 想い届く
本当に泣くんじゃないかと、見てるだけの俺までハラハラする。
でもニノはすぐに作り笑顔を浮かべると
「おはよう、もう大丈夫」
逃げることも無視することもなく、ちゃんと答えた。
予想外の反応にちょっと驚く。
おそらく翔も返事はもらえないと思ってたんだろう。
返事がもらえただけじゃなく笑顔まで見れて、翔の目が輝いた。
でも…
「心配してくれてありがとう………櫻井くん」
ニノがそう続けた瞬間、一気に絶望的な顔になった。
こっそり聞き耳を立てていたクラスメイトたちも息を呑む。
“翔ちゃん“
ニノが自分だけのものだと大切にしていた呼び方。
それをやめた。
ニノは本気で翔への想いを絶とうとしてるんだ。
おそろいのものを身につけるのをやめて。
特別な呼び名も捨てて。
“今まで通りには出来ない”
“そばには居られない”
あの言葉は冗談でもなんでもなくて本気なんだと行動で翔に突き付けた。
ニノは翔と一切目を合わせないまま、静かに教室を出て行って。
翔はガクリとその場に崩れ落ちた。
それからずっと屍のような状態が続いている。