第20章 想い届く
あんな別れ方をして、そのままニノと会えなかった3日間。
散々後悔して落ち込んで悩んで、それでもニノと離れたくないんだと何度も繰り返した翔。
そんなの最初から分かりきっていたことだろうと。
それなら、なんであの時…ニノの手を掴んで引き留めた時にそう伝えなかったんだと。
つい本気で怒ってしまった俺に、翔は一言も反論しなかった。
あの時、素直に友だちをやめたくないと伝えていれば…もっと言うなら告白していれば…
こんなことにはならなかっただろう。
あんな誰がどう見ても告白するべきタイミングがあったのに、そのチャンスをわざわざ棒に振ったんだから自業自得だ。
でも、言われなくても翔も分かってる。
誰よりも一番よく分かってる。
だから翔は足掻こうとしている。
もう今さら何を言っても遅い気もするけど、だからってこのまま何もしなかったら本当にニノを失ってしまうから。
誤解とすれ違いのせいで、これまで築いてきた2人の関係が全部なくなってしまうのは悲し過ぎると俺も思う。
だから頑張れ!
もういい加減本気出せよ、翔!
翔はギクシャクと不自然な動きでニノの前に立った。
「…おはよう、カズ。体調はもう大丈夫?」
明らかに固くて緊張してると分かる声だけど。
まるで何もなかったように…今までと同じように話し掛けた翔に、ニノは一瞬泣きそうな顔をした。