第20章 想い届く
ーMsideー
……ひどいな。
何もないところで躓いてよろけた翔を片手で支えながら、ここ数日で一生分吐いてんじゃないかと思うため息をまた吐いてしまった。
顔色は悪いわ、目は死んでるわ。
心配したクラスメイトに話し掛けられても上の空の返事しかしないし。
授業で指名された時には「分かりません」とうつろに答えて、先生にまで本気で心配されていた。
ここまでボロボロな翔を見るのは初めてだ。
あの、問題の日…
その翌日から3日間ニノは学校を休んだ。
担任に聞いたら発熱だって教えてくれた。
心も体も限界だったんだと思う。
4日目に登校してきたニノは、一回り小さくなってて。
元から細いのに全然食えてないんじゃないかな…
今にも消えてしまいそうな儚さに心配になる。
あれからずっと落ち込んで元気がなかった翔は、ニノが学校に来たことにホッとした表情を浮かべた。
でもすぐにその顔が強張る。
翔の視線はニノの首もとに注がれていて。
俺も改めて見て気付いた。
ニノがマフラーをしていない…
翔がクリスマスにプレゼントしたマフラー。
すげー喜んで、2人で幸せそうにおそろいを楽しんで。
毎日必ず身につけていたのに…
それだけでニノの強い決意が伝わってくる気がした。
この分だとスマホケースも外してんじゃないかな。
翔は相当ショックだったのか、泣きそうになっている。
でもすぐに泣いてる場合ではないと気付いたのか、小さく深呼吸して気合を入れると、意を決したようにニノヘ近付いて行った。