第19章 勘違い
カズが俯いたまま続ける。
「昨日…わざとじゃないけど、立ち聞きしちゃって…それはごめんなさい。でも2人のやり取りは本気に聞こえたし、その…抱き合ってたし…それってそう言うことでしょ?」
本気に聞こえたのは当たり前だ。
カズへの想いを口にしていたんだから。
でもカズはそれが雅紀への想いだと思ってる。
潤たちが言ってた通り俺と雅紀が両想いだって信じ込んでるんだ。
「だから、抱き合ってないって!転びそうになったのを支えてもらっただけなんだってば!」
雅紀も必死に否定を続ける。
「じゃあなんで好きって言い合ってたの?お互いのことじゃないなら何なの?」
「それは…」
必死な俺たちにカズが怪訝そうな視線を向ける。
でも、カズのことだって言えなくて。
また口ごもってしまった俺を見て、カズは悲しそうに目を伏せた。
「ごめん、俺には関係ないね…もう、聞かない」
何かを諦めたような声に気持ちが焦る。
「カズっ…」
「もういいよ。2人が付き合ってないって言うなら信じる…信じるしかないもん…」
俯いたカズの表情は見えない。
本当に?
本当に信じてくれた?
「カズ、今まで通りでいてくれる?俺の隣にはカズに居てほしいんだ」
「………」
俺の懇願に、カズは返事をしてくれなくて。
不安が膨れ上がっていく。