第19章 勘違い
「カズ、話があるんだ…聞いてくれる?」
翔ちゃんが真面目な顔になって、声も固くなった。
話…
智に散々翔ちゃんたちの話を聞くように言われた。
そしたら誤解って分かるよって。
でもさ、どうしても信じられないんだ。
もしかして、話って雅紀との交際報告なんじゃないのかな?
そんなの…
今、聞いたら。
またみっともなく泣いちゃうかもしれない。
それが本当なら、おめでとうって笑顔で言いたいけど。
まだ言えない。
だから、その話とやらはもうちょっと待ってほしい。
でもすぐに返事が出来ない俺に、翔ちゃんは困ったような悲しいような顔をしていて。
俺がそんな顔をさせてるんだって思ったら申し訳なくなった。
俺の気持ちなんて翔ちゃんには関係ない。
どんなにショックを受けてたって、後悔してたって、それが翔ちゃんにこんな顔させていい理由になんてならない。
「………分かった。でも放課後でいい?」
今できる精一杯の笑顔を浮かべる。
泣くのを我慢してるから、ちゃんと笑顔に見えてるかは分かんないけど。
「うん、もちろん」
翔ちゃんは少しホッとした顔をした。
そんなに早く報告したいのか…
だったら、ちゃんと聞いてあげなくちゃ。
よく見たら、翔ちゃんの向こうには心配そうに見守る智と潤くんがいた。
翔ちゃんと同じような表情をした雅紀もいた。
胸が痛い。
ごめん、雅紀。
そんな顔しないで。
もうこれ以上邪魔はしない。
ちゃんと2人の話を聞いて、笑顔で祝福するから。
祝福したら…
翔ちゃんへの気持ちは捨てるから。
本当にごめんね。