第19章 勘違い
休み時間になるなりニノは机に突っ伏してしまった。
小さく丸まった背中が全てのものを拒絶するようなオーラを醸し出していて、ちょっと近寄りにくい。
それは翔も同じみたいで。
一応ニノに話し掛けようとしてはいるけど、微妙に距離があるままだし。
口を開いては躊躇ってやめて…を何回も繰り返している。
パクパクパクパク金魚か!!
声に出して突っ込みたい衝動に駆られるが、そんなこと言える空気ではない。
クラスメイトたちもただならぬニノの様子が気になるようで、黙って成り行きを見守っている。
教室内は不自然に静かだ。
話し掛けにくいのは分かるけど、今ニノを楽にしてやれるのは翔しかいないんだぞ?
へたれてないで勇気を出せよ!
翔に目で訴えても、情けない顔をするばかりだ。
誰も動かず声も発さず、時間が止まったみたいだった教室の中、最初に動いたのは智だった。
智はしばらく黙って翔の行動を見ていたけれど、一向に話し掛けないことに痺れを切らしたのか、ぐいっと翔を押し退けて。
丸まってるニノに躊躇いなく近付くと、ふんわりと抱き締めた。
「ニノ」
優しく名前を呼びながら頭や背中を撫でる。
ニノのほっといてくれオーラをものともしてないし、ニノが無反応でも全く怯まない。
さすが、智。
翔もちょっと見習えよな。
智はずっとニノの耳元で小声で何かを話しかけていて。
具体的な内容は全く聞こえないけれど、きっと昨日のことは誤解だとか、翔たちの話を聞けとか。
そんなことを言ってるんだと思う。
でもニノはピクリとも動かず、その休み時間はそのまま終わってしまった。
翔は一言も話し掛けられないまま、肩を落としてトボトボと自分の席に戻っていった。