第19章 勘違い
雅紀が笑顔を見せてくれたから安心したけど。
笑ってる雅紀を見てたら今度はなんだか切なくなってきちゃって。
「芝居なんて言わないで、翔くんにニノのこと本当に好きなんだって言っちゃえば良かったのに」
ついそんなことを言ってしまったら、雅紀は困ったような笑顔になった。
「言えないよ…今の状況をなんとかしたくてこんなことしたんだもん。翔くんが俺のこと気にしてニノとますます微妙になっちゃったら困るじゃん」
「それは…そうかもしれないけど…」
雅紀の言うことは分かるけど。
でもそれじゃあ雅紀の気持ちは?
芝居って言葉の裏に隠されて、押し殺された雅紀の想いはどうなるの?
やっぱり切なくて。
やるせなくて。
でも俺のそんな感情も雅紀には分かってしまったみたい。
「ありがと、智。でもいいんだ。最初からニノとどうこうなるとは思ってないし…俺のことよりニノが笑顔でいてくれることの方が俺には何倍も大切なんだよ」
そう言って柔らかく微笑む。
雅紀のニノヘの想いの深さが伝わってくる気がした。
「それに本当だとは言えなかったけどさ、翔くんにニノのことが好きだって面と向かって言えてちょっとスッキリしたよ」
そう言って見せた笑顔は本当にスッキリしたような清々しいもので。
無理してたり強がってるようには見えなかったから
「そっか、良かったね」
俺も自然と笑顔になれた。
もしかしたら今回のことは雅紀にとっても自分の気持ちに区切りをつける良いきっかけになるのかもしれない。
なんとなくそう思った。