第19章 勘違い
下ばかり向いてると余計に涙が出ちゃうかもと思って少し顔を上げたら、机の上に置いてた小瓶が目に入った。
翔ちゃんがくれた“カズを元気にする魔法の薬”
「ふふっ…」
真面目にそんなことを言ってた翔ちゃんを思い出したら、少し笑うことが出来た。
小瓶から手のひらに出すと、色とりどりの小さな星たちが夕陽を反射してキラキラ光る。
「……あまい」
1つ口に入れたら優しい甘さが口いっぱいに広がって、何故かまた涙が溢れて。
「…ふっ…うっ…」
泣きながら笑った。
笑ったら少しだけ元気が出た。
本当だね。
本当に俺を元気にしてくれる魔法の薬だ。
でもね、俺には翔ちゃんの存在自体が魔法みたいだったよ。
翔ちゃんが大丈夫って言ってくれれば、本当に大丈夫だった。
翔ちゃんの笑顔を見れば、それだけで俺も笑顔になれた。
ただ翔ちゃんが隣にいてくれるだけで、すごくすごく幸せだった。
でもそれは俺だけだったんだよね。
ずっと優しさに甘えててごめんね。
もう翔ちゃんを俺から解放してあげなきゃ…
翔ちゃんにLINEを送って。
そのまま携帯の電源を落とした。
明日から翔ちゃんの隣に並ぶのは俺じゃないと思うと胸が痛い。
でももうワガママは言えない。
もう何も考えたくない…
このまま眠ってしまいたい…
そう思うのに、どうしても涙が止まらない。
それならもういいや。
今日はとことん悲しんで、涙が枯れるまで泣いてしまおう。
それで明日はまたいつもの俺に戻るんだ。