第19章 勘違い
「ニノ泣いてた」
ずっと黙って話を聞いていた智くんが急に口を開いた。
「えっ?」
「めちゃくちゃ泣いてた」
ポツリポツリと呟く智くんも泣きそうな顔をしている。
カズが泣いたと聞いて俺の胸もズキンと痛んだ。
でも泣くって…?
そんな事実はないけれど、俺と雅紀が両想いだと知って泣くなんて、それはどんな感情からくる涙なんだろうか?
「ニノは自分が2人の恋路をずっと邪魔してたんじゃないかって…自分を責めてた」
疑問が顔に出ていたのか、智くんが教えてくれるけど。
その目はまた鋭く光って俺を睨んでる。
「あ、言っておくけど智めちゃくちゃキレてるから」
潤がわざわざ補足してくれたけど。
「それはもう、見れば分かるっつーか…」
会った瞬間から視線だけで射殺されそうなくらい睨まれ続けてるから、今さら教えてもらわなくても知ってる。
でもやっと智くんが怒ってる理由が分かった。
決してわざとではないけれど、俺たちはカズのことを泣かせてしまったんだ。
いくら間が悪かったとか運が悪かったとか言っても、カズを傷つけたことに変わりはない。
「早くニノの誤解を解いてあげて!俺たちがどんなに否定しても信じないんだ。本人がちゃんと説明しないと納得しないと思うから…」
睨まれたままそんなことを言われて。
さっきカズのところに行こうとしたのを止めたのは智くんじゃん!!
…って、つい反論しかけたけど。
でも口にする前に思い止まった。
状況が何も分かっていない状態でカズに会っても、きっと何も出来なかった。
下手すれば状況は悪化していたかもしれない。
だからやっぱりさっき止められたのは正解だったんだろう。