第19章 勘違い
「は?本当に抱き合ってたのかよ?」
俺たちの反応を見た潤が訝しげな顔をしたから
「違う違う!別に抱き合ってたわけじゃないから!」
「俺が木の根っこに躓いちゃって!」
「こけそうだったのを咄嗟に支えただけだよ!」
別にやましいことなんて何もないのに、雅紀と慌てて弁解してしまった。
焦ってしまったら逆に怪しいかとも思ったけど
「ああ、そういうことね」
潤はあっさり信じると
「びっくりするくらい間が悪かったんだな…」
なんてしみじみと呟いて首を振った。
「間が悪い?」
ピクッとその呟きに反応してしまう。
「なぁ、さっきから何を言ってるんだ?俺たちしか知らないはずのことまで知ってるのは何で?」
聞きながら、たぶん誰かに見られるか聞かれるかしていたんだろうなと思った。
問題はそれが誰かってことで。
この、今の状況から思い浮かぶのなんて1人しかいないけど…
出来たら違っていて欲しいと。
祈るような気持ちで潤の返事を待つ。
だけど…
「…ニノが見てたんだよ」
ため息混じりの答えは、違っていてほしいと思った俺の予想通りだった。
「えっっっ!!?」
そんなこと全く考えていなかったらしい雅紀は驚きの声を上げて固まった。
予想通りとは言え、俺だって動揺している。
だって、カズが見てたって…
それは何を?どこから?どこまで?
もしかして…
俺の気持ちを聞かれた…?
そこに思い至ってサーっと血の気が引いていく。
俺の気持ちがバレて…
だからカズは今ここに居ないんだろうか。