第19章 勘違い
「今回はお芝居だったけどさ、こんなようなこと実際にも全然あると思うよ」
それはあるだろうと俺も思う。
現にカズは既に告白されたことだってあるし、かなりの数の隠れファンがいることだって知ってる。
「ニノを他の誰かにとられてもいいの?」
「よくない」
今度は即答した。
「でしょ?なら頑張ってよ!」
雅紀が嬉しそうに笑う。
でも俺にはさっきから気になってることがあった。
「雅紀はいいのか?俺、男だよ?その…男同士でさ…」
どうやら雅紀は俺の背中を押そうとしてくれてるっぽい。
雅紀に応援してもらえるなんて、それは単純にすごく嬉しいんだけど。
男同士ってことに思うところはないんだろうか?
でも雅紀は俺の心配をおおらかに笑い飛ばした。
「俺はね、ニノが幸せになってくれるならなんだっていいの。性別なんて大した問題じゃないよ」
雅紀の笑顔を見ていたら、俺にとってはかなり大きな悩みだったのに、本当に小さなことに思えてくるから不思議だ。
「翔くんは絶対にニノを大切にしてくれるでしょ?翔くんのニノヘの想いの深さと大きさを俺は信じてるから…だから応援してるんだよ、翔くんのこと」
「ありがとう」
まっすぐな雅紀の気持ちに感動して、素直にお礼を言うことが出来た。
「雅紀にそう言ってもらえるの、めちゃくちゃ嬉しいよ」
雅紀に対して恥ずかしくないように、俺も今思っていることをまっすぐに雅紀に伝える。
「くふふ、良かった!頑張ってよ!ね?」
「うん」
「ニノのこと幸せにしてあげてね」
そう言う雅紀は笑顔だけど、どこか寂しそうで。
なんていうか子離れしようとしてる親みたいな?
この場合は幼なじみ離れっていうのかな。
大切な存在が自分の元から離れていくのをただ見守るのはどんな気持ちなんだろう。
ちょっと想像してみただけでもう切ない。
それでも雅紀はカズの幸せのためにって俺の背中を押してくれたんだ。
カズの気持ちは分からない。
本当に俺がカズを幸せに出来るのかも分からない。
それでも、俺は雅紀の想いをしっかり受け止めたいって思った。