第19章 勘違い
「ニノ!ニノ!!ねぇ、どうしちゃったの?」
「……え?さとし?」
智が再びニノを揺さぶったら、ニノがパチパチと瞬きをした。
まるで初めて智の存在に気付いたみたいな反応に怖くなる。
でもまだボーっとしているけど、さっきよりマシになったか?
少なくとも目の焦点は合ってる気がする。
「ニノ?どうしたの?大丈夫?」
「なにが?」
「何がって…」
「俺、帰るね」
ニノは智の質問には答えず、フラフラとカバンを掴んで帰ろうとした。
「待って!まだ翔くんと雅紀が…」
智が慌ててニノを引き留める。
こんな状態のニノを1人で帰せるわけがないから当たり前だ。
でも翔たちの名前を聞くなりニノの体が震えだした。
「ニノ?」
「…や…だ…、…家に、帰る…帰りたい…」
震える声で小さな子どもみたいに駄々をこねる。
この反応はなんなんだ?
一体何があったというんだろうか?
心配と後悔が押し寄せるけれど、とにかく早く翔に会わせてやらなきゃって。
翔さえ戻ってくれば落ち着くだろうって、そう思って。
「ニノ、翔と雅紀もう戻るはずだから。待ってろって…」
俺もニノを引き留める言葉を口にしたら
「…今、翔ちゃん…と…雅紀には、会えない…」
ニノの瞳から大粒の涙が溢れ落ちた。
まさかニノが翔を拒絶するなんて予想もしていなかったから、ただただ驚いてしまって。
咄嗟に何も言えなかった。