第19章 勘違い
ニノを待ってる間に、他の当番のやつらは帰ったり部活へ行ったりして、教室には誰もいなくなった。
それなのにニノはまだ戻ってこない。
思っていたより時間が掛かっている。
「どうしよう…やっぱり今からでも迎えに…」
いよいよ待ちきれなくなった智が動き出そうとしたら、廊下の向こうからニノが歩いて来るのが見えた。
智が目に見えてホッとしたのが分かる。
「ニノー!」
すぐに智が声を掛けるけど反応がない。
聞こえなかったのか?
「ニノ!……ニノ?」
智が何度呼んでも、やっぱり反応がなくて。
この距離で聞こえないなんてあるか?
不審に思って近付いてみて、ニノの様子がおかしいことに気がついた。
顔が真っ白で血の気がない。
目は虚ろで何も映してなくて。
足元も何だか覚束ない。
「ニノ!ニノ!?」
智が耳元で呼び掛けても何も聞こえてないみたいだった。
「何これ?どうしちゃったの?」
智が泣きそうな顔で俺を見る。
でも俺にだって分からないから答えようがない。
「ニノ!」
智がニノを力任せに揺さぶった。
ニノは人形みたいにされるがままで。
頭がぐらぐら揺れてる。
「智!」
このままじゃ脳震盪を起こすかもしれないと、智を止めた。
「ニノ!ニノ!返事してよ!」
智は揺さぶるのはやめたけど、肩に手を置いたままニノを呼び続ける。
「…さ、とし?」
しばらくしたら、ぼんやりとしたニノの声がして。
「ニノ!分かる?どうしたの?何があったの?」
智が矢継ぎ早に質問するけど、ニノは答えない。
虚な目で辺りを見回す。
「…あれ?ゴミ箱は?」
そう聞くニノの手にはしっかりゴミ箱が抱えられていて。
「持ってるでしょ!」
「…ああ、ほんとだ」
智が震える声で教えると、ニノはぼんやりと自分の手元を確認してフラフラとゴミ箱を定位置に置いた。
そのまま、またフリーズしたように動かなくなる。
明らかに様子がおかしい。
尋常じゃないニノの様子に智はパニック寸前だ。
俺もニノを1人にしたことをめちゃくちゃ後悔した。