第19章 勘違い
ーMsideー
突然現れた雅紀が引きずるように翔を連れ去って行った。
まるで嵐のようだった。
翔は何やらもがいているようだが、雅紀は全く意に介さない。
「なに…?」
智も呆然としている。
2人で、どんどん遠ざかって行く翔と雅紀の背中を黙って見送った。
ニノは廊下でのやり取りに気付いた様子もなく、他のやつと喋りながら掃除を続けてる。
気付いてないなら、わざわざ言う必要はないか。
掃除が終わってから教えればいいだろう。
もしかしたらその前に帰ってくるかもしれないし。
「雅紀、翔くんに何の話だろ?」
智が首を傾げる。
どこか不安そうだ。
「まぁ、十中八九ニノのことだろ」
「それは、そうなんだろうけど…」
雅紀から翔に…それもこんな状況の今…
逆に他の話なら驚くぞ。
ただ、雅紀がいつになく真剣な顔してたのが気になるけど。
「そんなに心配しなくても大丈夫だろ。雅紀だってあいつらの幸せを願ってるんだから」
「うん…」
雅紀もニノのために何かしたいって言ってたらしいから、きっとこれがその何かなんだろう。
色々と想像の斜め上を行く雅紀だから、俺も若干不安っちゃ不安だけど。
まぁ大丈夫だろう。
………たぶん。
「あっ!ニノがいない!!」
急に智が大きな声を出すから我に返った。
教室を覗くと確かにニノの姿がない。
一緒に掃除してた滝沢を捕まえる。
「なぁ、ニノは?」
「ゴミ捨て行ったよ」
「マジで?1人で?」
焦る俺らに、滝沢が怪訝な顔になる。
「なんかマズかったか?翔は?」
「翔、今いないんだよ」
「マジか…悪い、俺もちゃんと確認すればよかったな…」
責任を感じたのか申し訳なさそうに謝ってくれるけど、滝沢は何も悪くない。
「いや、滝沢は悪くない…廊下にいたのに気付かなかった俺らが悪いんだ。ごめんな」
大丈夫だから気にするなと伝えて、再び廊下に出た。