第19章 勘違い
足音を消して近付くにつれて
「……ある…」
「何…?……のこと好きじゃ………でしょ?」
途切れ途切れに会話が聞こえてくる。
やっぱり翔ちゃんの声だ。
俺の大好きな声を間違えるわけがない。
それに、相手の声も知ってる。
いやってほど耳に馴染んだ声。
……雅紀?なんで?
こんな所で隠れるみたいにして2人でなんの話してるの?
胸がドキドキして息苦しい。
自然と足が止まる。
なんだか嫌な予感がする…
これ以上聞かない方がいいって、頭の中で警鐘が鳴ってる。
そもそも盗み聞きなんて悪趣味だ。
話の内容に関わらず勝手に聞いちゃダメだよ。
早くここから立ち去らなきゃって思うのに、同じくらい2人の話の内容が気になってしまって。
前にも後ろにも一歩も動けないでいたら
「俺は好きだよ」
「俺だって……俺だって好きだ!!」
静かな雅紀の声と叫ぶような翔ちゃんの声が…
2人の告白が俺の耳に届いた。
………え?なに?
好き?誰が誰を?
雅紀が翔ちゃんを?
翔ちゃんが雅紀を?
………2人は両想いだったの?
………嘘………でしょ………?
そこで引き返せば良かったのに。
金縛りが解けたみたいに急に動けるようになった俺は、何故かフラフラと前進してしまって。
木立の隙間から、しっかりと抱き合う2人の姿を見てしまった。
頭が真っ白になった。