第19章 勘違い
「翔くんはニノのこと好きじゃないし、付き合いたくもないんでしょ?それなら俺がニノに告白してもいいよね?」
雅紀はそんな俺にはお構いなしに1人で話し続ける。
「俺はニノが大好きだし、ニノが応えてくれるなら付き合いたいと思ってる」
まっすぐな言葉が胸に刺さる。
俺が口に出来ないことを雅紀は簡単に口にする。
本当は分かってる。
俺は現状を壊す勇気のないただのヘタレで。
自分の弱さを誤魔化すために、出来ない言い訳を探して並べてるだけだって。
行動を起こすことを恐れない雅紀が眩しい。
「翔くんは俺がニノと付き合っても何とも思わないんだね?」
雅紀らしくない挑発的な口調に、胸がチリっとした。
「俺は嫌だ。好きだから他の人に取られたくない。ニノを俺だけのものにしたい。だから行動に移すよ」
怒りのような悔しさのような、そんな感情が沸々と湧き上がってくる。
「翔くんもニノのこと好きだと思ってたから一応言っておこうと思ったんだけど。関係なかったね。わざわざ時間取らせてごめんね」
雅紀は全然心のこもってない謝罪を口にして背を向けた。
立ち去ろうとするその背中に手を伸ばして、咄嗟に腕を掴む。
頭で考えるより先に体が動いてた。
「なに?」
面倒くさそうに振り向いた雅紀は、見下したような冷たい視線を俺に向ける。
「俺がニノに何を言おうが、何をしようが、翔くんには関係ないんでしょ?」
確かに、俺には雅紀の行動に何か言う権利も資格もない。