第19章 勘違い
「風ぽん?」
「……………でよ」
どうしたんだろうと思って名前を呼んでみたら、風ぽんが何か言ったんだけど、声が小さすぎて全然聞き取れなかった。
「え?なに?もっかい言って?」
「苦しい!離して!って言ったの!」
聞き返したら、今度は叫ぶみたいに大きな声を出す。
あ、締めすぎてた?
腕をタップされたから、慌てて離れる。
「ごめんごめん」
「もう、ばか力なんだから…加減してよ〜」
風ぽんは眉毛を下げて情けない顔してる。
まだ顔が赤い。
そんなに苦しかったのかな。
悪いことしたな。
「ごめんね」
ぱんっと手を合わせて頭を下げたら、もういいよって笑ってくれた。
でもさっきも離してって言ってた?
なんか違う気がしたんだけどな。
ちょっとだけ引っ掛かったけど。
「いいよ、もう気にしないで。さ、考えよ!」
「うん!」
「やっぱり櫻井くんから告白するように仕向けられたらいいよね?」
「うん」
「それならさ、例えば…」
風ぽんが色々提案してくれる。
やっぱり相談して正解だった!
1人じゃこんなに思い付かなかったよ、絶対。
さすが風ぽん!
次々出てくる提案にすっかり気を取られて。
あーでもないこーでもないって話してるうちに、何かに引っ掛かったこと自体忘れてしまって。
だから俺は風ぽんの呟きの内容を知ることは出来なかった。
“大好きなんて簡単に言わないでよ”
その時、風ぽんがどんな顔してたのかも。
俺は知らないまま。