第19章 勘違い
「じゃあさ、好きな人が分かったらどうするの?」
更に質問をぶつけてみる。
相手が分かったとして、どうする気なんだろう?
「応援する」
「え?」
簡潔すぎる答えに、一瞬ニノがなんて言ったのか分からなかった。
「翔ちゃんが幸せになれるように協力する」
「だって、それじゃニノの気持ちは…」
きっぱり言い切るニノに、なんだか俺の方が狼狽えてしまう。
「俺の気持ちは変わらない。翔ちゃんに好きな人がいたって、恋人が出来たって…俺はずっと友だちでいられればいいんだ」
「ニノ…」
ニノの目はまっすぐで、とても澄んでいて。
言ってることに嘘はないんだと思う。
でも瞳の奥に悲しさも見えるよ。
そんなの見ちゃったら俺が切なくなっちゃうよ。
「翔ちゃんのために出来ることがあるなら、俺に出来ることはしたい。でも相手が分かんないからどうにも出来ないんだよ」
なんで分からないんだろって首を捻るニノ。
それはこっちのセリフだよ。
なんで分かんないのってみんな思ってるよ?
智は苦笑すると
「ニノの探してる人はすごく近くにいるんだよ?」
「近くに?」
「そう。ニノは近すぎるのかもね。だから見えないし気付かないんだよ、きっと」
ニノの頭を撫でながら、目を見て優しく言い聞かせる。
「誰が一番翔くんの近くにいるか考えてごらん?」
ニノは真剣な顔でコクリと頷いた。
ニノが翔くんの幸せを願うように。
俺たちはニノの幸せを願ってるよ。
俺はニノに何をしてやれるかな。