第19章 勘違い
ーAsideー
昼休み。
今日は母ちゃんが寝坊して弁当がないから、ニノたちと一緒にパンを買いに行くことにした。
あ、もちろん俺はニノたちみたいにパンだけじゃお腹いっぱいにはならないから、学食で定食も頼むけど。
最近は学食に直行してて、ニノや智と3人だけの時間があんまりなかったから、たまにはいいかなって。
あと、久しぶりに美味しいパンが食べたかったのもある。
「分かんない」
購買に向かう途中、眉間にシワを寄せたニノが呟いた。
「何が?」
突然すぎて、つい聞き返しちゃって。
「翔ちゃんの好きな人」
返ってきた答えに、思わず智と顔を見合わせた。
聞くまでもなかったな。
ニノは最近ずっと翔くんの好きな人を探してる。
どうやらバレンタインの日に翔くんに好きな人がいると知ったらしい。
俺はその日、風邪をひいて学校を休んでて。
その騒動を知らなくて、後から智と潤に教えてもらった。
ニノはその時に自分以外はみんな翔くんの好きな相手を分かってると知って、かなり落ち込んだらしい。
俺だってもちろん知ってるけど、ニノに「雅紀まで知ってたらショック過ぎるから聞かないし、言わないで!」と言われたから黙ってる。
ニノの中では俺も知らないことになってるっぽい。
「ねぇ、ニノはさ、何で翔くんの好きな人が知りたいの?」
「だって…やっぱり気になるもん」
気になってたことを聞いてみたら、ニノは拗ねたように答えた。
まぁ分かる。
好きな人に好きな人がいたら、普通だれだか気になるよな。