第19章 勘違い
潤にはもう散々情けない姿を見られてるから、今更カッコつける必要はない。
「だって!俺も“翔ちゃんあっためて”とか言われたい!」
「なんだそりゃ」
潤に呆れられてもめげない。
「潤だって智くんに言われたいだろ!?」
「…そりゃまぁ」
「ほらみろ!」
同意を求めれば素直に頷く。
絶対潤には俺の気持ちが分かると思ったんだよ。
思わず勝ち誇ったような顔をした俺に、潤はますます呆れ顔になった。
「気持ちは分かるけどさ。翔だってしょっちゅうニノと手を繋いだり抱き締めたりしてんじゃん」
「あれは…だってどれもちゃんと理由があってのことだから…」
「はぁ?理由?」
なんでそんな顔すんだよ。
あるだろ、理由。
…ただの口実になっちゃってることも多いかもだけどさ。
「……まぁ、いいや。なら、今だって寒いからってのが理由になるじゃん」
「…なる…かなぁ?」
そりゃカズが望んでくれるなら、カズのことはいつだって俺があっためてあげたい。
でも最近なんか…
うまく言えないけどカズとの空気が今までと少し違うと言うか。
気のせいって言われればそうかもしれないと思うくらいのものなんだけど。
ほんの少し距離感が変わったような気がしてて。
別に何か言われたり、態度に出されたりはしてないんだけど。
何となくカズに触れにくいっていうか。
いや全く触れてないわけでもないけど。
「それにカズからって、ほとんどないからさ」
手を繋ぐのも抱き締めるのも大抵は俺からで。
カズはいつだって受け身で。
それが嫌なわけじゃない。
拒否されたこともないし。
でもやっぱり智くんはカズの中で特別なんだって思うから。
「どうしたって羨ましいって思っちゃうよ」
よっぽど情けない顔になってたのか、潤は励ますように俺の肩を叩いた。