第19章 勘違い
ーSsideー
今思い返してみても、バレンタインデーのカズの様子は明らかにおかしかった。
1日中元気がなくて、ずっと悲しそうに瞳が曇っていて。
いつ泣き出してもおかしくない雰囲気で…
実際、朝の俺がいない時に泣いてたし。
カズは何でもないって言ってたけど、絶対何でもないはずない。
それでも涙を溜めた目で聞かないでくれと訴えられてしまったら、無理に聞き出すことも出来なくて。
自分の無力さや、カズに頼ってもらえない寂しさに打ちひしがれながら、ただオロオロするだけで時間が過ぎてしまった。
それが放課後、気が付いたらいつものカズに戻っていた。
俺は安心してしまって、やっぱり一時的に体調が悪かっただけか…なんて思って。
もうもらえないものと思っていたのに、カズからチョコを…それも手作りのものをもらえて浮かれてしまったのもあって、深く追及しなかった。
でも、あの日からずっと。
どこかカズの様子がおかしい気がする。
あの日ほどあからさまに変なわけじゃない。
でも気がつくとぼんやり考え込んでいたり。
急にため息を吐いたり。
少し笑顔も減った。
それと…自意識過剰かもしれないけど、やたらと俺を見ている気がする。
カズに見つめられて最初は、“もしかしてカズも俺のこと…?”なんてちょっとドキッとしたりしたけど。
なんていうか、決してそういう甘い視線じゃなくて…何かこう観察されているというか。
でもそれが一体なにを意味しているのか分からなくて。
どこか不安定なカズにつられるように、俺も少し不安になってしまっていた。