第19章 勘違い
「カズ元気ない?」
知らず知らず吐いてたため息を翔ちゃんに聞かれちゃったみたい。
「ううん!元気だよ?」
慌てて顔を上げたら、口に何かを入れられた。
「…あまい。何これ?」
にっこり笑う翔ちゃんの手には小さな瓶。
「これはね、カズを元気にする魔法の薬だよ」
「ふふっ」
大真面目に言うから笑ってしまった。
「もう、翔ちゃんたら」
「はい、あげる」
翔ちゃんも笑いながら俺の手を取ると、その小瓶を乗せてくれた。
中には色とりどりの小さな星たちが詰まってる。
「こんぺいとう?」
「なんか懐かしくて買っちゃったんだ。カズにもお裾分け。甘いもの食べると元気になるでしょ」
優しい優しい翔ちゃん。
握った小瓶からも翔ちゃんの優しさが伝わってくるみたい。
「ありがとう」
嬉しくて手の中のこんぺいとうを眺めていたら
「カズ、最近何か悩んでる?俺でよければ聞くよ?」
翔ちゃんが少し心配そうな目をして聞いてくる。
悩みじゃないけど…
最近ずっとずっと気になってること。
聞いていいのかな?
本人に直接、聞いてみちゃう?
「翔ちゃん…翔ちゃんの…」
好きな人ってだれ?
聞いたら、翔ちゃんはどんな反応する?
照れて内緒にする?
それともあっさり誰か教えてくれる?
翔ちゃんの口から相手の名前が出たとき、俺は冷静に反応できるかな…
きっと出来ない…よね…
そこまで考えたら急に勇気がなくなって。
喉元まで出掛かってた質問を飲み込んで、笑顔を作る。
「…ごめん。何でもない」
続きを聞きたそうな翔ちゃんには気付かないフリして、誤魔化すようにエヘヘと笑った。
翔ちゃんは諦めたようにため息を吐くと
「いつでも聞くから…話したくなったら話してね」
俺の頭を撫でて困ったように笑った。
「うん、ありがと」
もうちょっと心の準備が出来たら聞けるかな。
でもやっぱりその前に自力で見つけたいな。
翔ちゃんの好きな人はどこにいるんだろう?