第18章 バレンタイン
「さんざんけしかけたけど、ニノだけに作らせるのはなんか悪いっつーか…ズルいかなって思ってさ」
「潤って変なとこ真面目だよね」
智がクスクス笑い出す。
「それで俺に友チョコ作ってくれたの?俺ラッキーだな」
にこっと笑った顔はめちゃくちゃ可愛くて。
「潤が作ったものなら絶対うまいもん。ありがとう、すっげー嬉しい」
まっすぐに俺を見て喜びを伝えてくれる智が愛しくてたまらない。
智への想いがどんどん溢れてくる。
今年は俺も全部のチョコを断ってる。
理由は翔と同じ。
“好きな人がいるから”
翔と違うのは、俺は智からのチョコは全く期待していないってことと、逆に俺が智に渡そうと決めていたこと。
さっさと渡してしまおうと思っていたのに、翔たちがゴタゴタしてたから、結局放課後になってしまった。
こんなものを用意したけど、告白しようなんて思ってないし、渡したからって智との関係が進展するとも思ってない。
ただ伝わらなくても気持ちのカケラを渡したいって言う自己満足と。
智の喜ぶ顔が見たいって。
それだけ。
ただそれだけだったのに…
「……違う」
「え?」
気付いたら口が勝手に動いてた。
「友チョコじゃない」
「潤?」
智は何を言われてるのか分からないって顔をしていて。
戸惑ってるのが分かるのに、俺の口は止まらなかった。
「……俺、智が好きだ」
ポロリと口から言葉が溢れ落ちて。
「智のことが好きなんだ」
突然の告白に智が目をまん丸にしたけど。
それ以上に自分の口から溢れ出た言葉に、俺自身が驚いてしまっていた。