第18章 バレンタイン
カバンから小さめの箱を取り出す。
ニノのと違ってなんの飾りもないごくシンプルな白い箱。
「智、ちょっとだけ付き合ってくんね?」
「いーけど、どこに?」
智に声を掛けて教室から出たら、智は首を傾げながら付いてきてくれた。
「んー、どこがいいかな?」
「なにそれ??」
別に目的の場所があるわけじゃない。
ただ出来ればあまり人のいないところがいいなと思っただけで。
特にまだクラスメイトが残ってる教室は避けたかった。
智はますます首を傾けるけど、ちゃんと付き合ってくれるようだ。
人気の少ない場所を求めて適当にぶらぶら歩くけど、まだ校内の至る所に生徒が残ってて。
結局たどり着いたのは裏庭。
校内ではど定番の告白スポット。
ここも今日みたいなイベントの日は誰かしらいるかもと思ったけど、タイミングが良かったのか誰もいなかった。
こんないかにもな場所は出来れば避けたかったけど、仕方ないか。
「ここでいいや」
「ここ?」
キョトンと俺を見つめる智が可愛い。
こんな場所で2人きりでも俺への警戒心は全くないみたいだ。
もしかして告白されるのかも…みたいな緊張感も感じられない。
もちろん何もやましいことをするつもりはないから、それでいいんだけど。
俺って本当に智に意識されてないんだなって、ちょっと苦笑したくなる。
ま、いいや。
「こんなとこまで付き合わせて悪いな」
「いや、いいけど…」
「これ」
俺も特に緊張することなく、手に持ってた箱をひょいっと差し出した。