第18章 バレンタイン
ーMsideー
「翔ちゃん♡あーん♡」
「あーん♡」
ニノ作のクッキーを頬張りながら、いつも通りの暑苦しい2人のやり取りを眺める。
暑苦しいけど、今は安心するっちゃする。
でもなぁ…
「あれさ、翔の気持ちニノに伝わってないよな?」
「うん…あんなにはっきり特別って言われても分からないんだね」
智は困ったように眉毛を下げている。
「翔もさ、あれ本命チョコだって分かってねーだろ」
お姉さんにお礼を伝えてね、なんて言ってるのが聞こえる。
ニノの口実まんま信じちゃってるじゃん。
「もう、お互いはっきり好きだって言わないと伝わらないだろうな」
「ニノ、翔くんに好きな人がいるって…自分は失恋したって誤解したままだよね…」
そうなんだよな。
ニノはチョコを受け取ってもらえて、それだけで嬉しそうにしてるけどさ。
翔がニノのこと好きだから受け取ったとは分かっていないっぽい。
今日1日落ち込んでたのが嘘みたいに、すっかりいつも通りみたいな顔してるけど。
絶対いつも通りなわけないだろ。
これは進展どころか、拗れただけな気がする。
でも今すぐ何かしてやれることはないし。
とりあえず今は平和にイチャついてるし。
ひとまずあの2人のことは置いといていいかな…
翔たちに気を取られてたせいで、俺もやりそびれてることがあるんだよ。