第18章 バレンタイン
この“いかにも残り物です”というクッキーとは全然違う、丁寧にラッピングされた可愛い箱。
翔くんがそっと開けると、中には美味しそうなトリュフが入ってた。
誰がどう見たって本命チョコ。
「これも手作りなの?売り物みたい!カズすごいね!!」
翔くんは目を輝かせて喜んでるけど。
分かってるのかなぁ?
…っていうか、さっきのは告白じゃなかったわけ?
俺たちの戸惑いに2人は気付かない。
「意外と簡単なんだよ?はい、あーん♡」
「あーん…うまっ!!」
ニノはチョコを1つ摘んで翔くんの口元に運ぶ。
翔くんはデレデレ笑み崩れながら口を開けて、チョコを口にするなり目を輝かせて叫んだ。
「本当?」
「今まで食べたチョコレートの中で一番うまいよ!」
「そんなわけないじゃん、もう///」
「本当だってば」
あっという間にいつも通りに戻った2人。
周りが見えない2人だけの世界。
暑苦しいくらいのラブラブっぷり。
あんまりアツアツだから、チョコが溶けてしまうんじゃないか心配になるくらいだけど。
でも何だかすごく安心した。
ニノにあんな泣きそうな顔ずっとされてるより何倍もいい。
やっぱりニノには笑っていてほしいよ。
「とりあえず一件落着…かな?」
もう食べて大丈夫だろうと、クッキーに手を伸ばす。
「いや…落着はしてなくないか?」
潤も首を捻りながら、クッキーを手に取った。
ちょっと焦げてたり形が崩れてたり。
でも味はいい。
「うまい、これ」
「本当だ。相変わらずニノは器用だな」
みんな次々手を伸ばして、タッパーはあっという間に空になった。