第18章 バレンタイン
ーOsideー
「特別だから」
ニノの手をしっかり握って、まっすぐ目を見て。
翔くんがはっきりそう言った瞬間、ニノの目から涙が溢れた。
ああ、やっと翔くんの気持ちが伝わった!
「えっ!?カズっ!?」
突然泣き出したニノに翔くんは焦ってるけど。
ポロポロポロポロ…
ニノの涙は止まらない。
でも、これは嬉し涙だもんね。
いくらでも泣いていいと思う。
思わず俺までもらい泣きしそうになっていたら
「智っ!」
何故かニノが飛び付いたのは俺で。
え?なんで?
ここは翔くんに抱き付くところじゃないの?
びっくりして涙が引っ込んだ。
とりあえず受け止めてやると
「翔ちゃんが受け取ってくれた!」
「良かったね。だから大丈夫だって言ったでしょ?」
「うん!」
まだ目には涙が残ってるけど、ニノはニコニコしていて。
ずっと泣きそうな顔で無理してたのが嘘みたいな心からの笑顔。
いや可愛いけども、その笑顔は翔くんに向けてあげなよ。
でも翔くんも特に気にしてる様子はないな。
それどころか、今の会話でニノが悲しくて泣いてるんじゃないって分かったのか、安心したような顔しちゃってる。
「友チョコは別枠だった!特別だって!」
「………は?」
ちょっと待って!
ニノ今なんて言った?
特別なのはチョコじゃなくて!
ニノのことでしょ!?
隣では潤も…
いや、潤だけじゃない。
固唾を飲んで2人を見守っていたクラスメイトも、みんなみんな呆然としてるよ!
ポカーンとする俺たちを置いて、ニノは翔くんの元へ戻っていくと
「あのね、姉ちゃんのチョコ作りを手伝ってね、残ったのをもらったんだよ」
なんてニコニコ説明を始めた。